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WIA 三国志 365

[Day 120] ひと人が、ござる、とのお言葉(Book 4「捨て尽くされたる夜」のお幕の閉ぢ)

掲載 記事番号 58367
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[Day 120] ひと人が、ござる、とのお言葉(Book 4「捨て尽くされたる夜」のお幕の閉ぢ)

四月 · すべて捨てた夜 | 約三分の読み

삼국지 365 · Day 120 · Book 1「星が集まる」
삼국지 365 Day 120 헤더 일러스트
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竹林(ちくりん)の彼方(かなた)の集(つど)いより、ちょうど、ひと月が、お過ぎ給いたるある午後にてあった。

新野(しんや)の小さき市に、市が、お立ち給う日にてあった。劉備(りゅうび)は、今日、お久しく、独りにて、市へと、お出(い)で給いたり。張飛(ちょうひ)は、午前(ごぜん)に、狩(か)りに、お出で給い、関羽(かんう)は、書を、お読み給う部屋に、お入り、お座り給いおったのである。劉備は、藁鞋(わらじ)ひと足(そく)を、お売り給う為に、市へと、お出で給う、と、お申し給いたり。実(まこと)に、藁鞋ひと足が、彼の左の手に、お握り給われおったのである。

二十八のお年に、母と共に、お織(お)り給いて、お売り給いたる、正(まさ)に、その形にてあった。四十七の劉備が、今日の午後、自(みづか)らの手にて、再び、お編(あ)み給いたるところに、ござる。手の動きが、昔ほど、速からざりき。されど、ひと足分の藁は、堅く、お編み給われ給いおったのである。

市の角(かど)に、米屋(こめや)ひと人が、ござりたり。新野に、お来り給いてより、未(いま)だ、ひと月に、お達し給わざる人にてあった。蔡瑁(さいぼう)が、襄陽(じょうよう)より、お遣(つか)わし給いたる監視者(かんししゃ)の中(うち)の、ひと人にてあった。されど、その米屋は、商(あきな)いが、拙(つた)かりき。米よりも、噂(うわさ)が、多き人にてあった。

劉備が、藁鞋を、お持(も)ち給いつつ、お通(とお)り給う処(ところ)、その米屋が、ちょうど、傍(かたわ)らの汁屋(しるや)の主と、お話を、お致し給いおったのである。お声は、低かりき、されども、劉備が、丁度(ちょうど)、傍らを、お通り給うその刹那、ひとつの文章が、はっきりと、彼の耳元(みみもと)に、お入り給いたり。

「南に、ひと人が、ござる、とのお言葉に、ござる。お名は、未(いま)だ、お申し給うべき時にあらず、ござる。されど、その人を、お訪(おとな)い給いたる者は、別なる人を、三度(みたび)、いっそう、お探し給う必要、ござらず、と、お申し給う、ござる。」

劉備の足取りが、極めて、短く、お止(とど)まり給いたり。永くは、お止まり給わざりき。彼は、再び、歩みを、お移し給いたり。ただ、その文章は、彼の歩みの後ろを、ひと歩みばかり、離れて、お従(したが)い来(きた)り始(はじ)め給いたり。

藁鞋を、お買(か)い給いたる人は、市の反対側の老婆(ろうば)にてあった。老婆は、劉備のお顔を、お見分(みわ)け給うを、お得ざりき。藁鞋ひと足に、小さき銅貨(どうか)数(すう)枚を、お受け給いて、劉備は、その席を、お去り給いたり。銅貨数枚の値(あたい)が、彼の左の手の内側にて、重く、お感じ給われたり。

四十七の劉備が、今日、十九年(じゅうきゅうねん)ぶりに、はじめて、自らの手にて、お織りて、お売り給いたる藁鞋ひと足の値を、お握り給いおったのである。

その値は、軽かりき。されど、軽さの内側には、十九年の重さが、しずかに、お畳(たた)み給われおったのである。二十八のお年に、ひとつの文章を、お呑み込み給いたる後、四十七の今日、彼は、はじめて、自らの両手にて、藁鞋ひと足の値を、再び、お受け給いたる男と、為(な)り給いたり。

삼국지 365 Day 120 중간 일러스트

市より、お戻り給う路の北の路地(ろじ)にて、劉備は、同じ文章を、いま、ひと度(たび)、お聞き給いたり。今度(こたび)は、幼(いとけ)なき子のお口より、にてあった。

子が、傍らの、いま、ひと人の子に、お話し給いおりたのである。

「兄が、お申し給うに、南に、ひと人が、ござる、とのお言葉に、ござる。お名は、未(いま)だ、お知(し)り給わずと、ござる。その人のみを、お訪い給わば、別なる人を、いっそう、お探し給う必要、ござらず、と、お申し給う、ござる。」

幼なき子らのお口より、その文章が、お出(い)で給いたる事が、却(かえ)って、劉備のお気持ちに、最も大きく、お打ち入(い)り給いたり。子らのお口へと、お移り給いつつ、ござるとの事は、いま、この文章が、大人(おとな)たちの秘密(ひみつ)にあらざる、ござるとの意味にてあった。この文章のお主が、誰人(たれびと)に、ござり給うかを、荊州(けいしゅう)の殆(ほとん)ど、皆(みな)が、既(すで)に、お察(さっ)し給いおる、ござるとの意味にもまた、ござりたり。

劉備は、その二人の子の前にて、暫(しば)し、お止(とど)まり給いたり。その後、しずかに、ひと言を、お渡し給いたり。

「子らよ。その人のお名は、いずこに、お参(まい)り給わば、お訪(たづ)ね給うを、お得(う)るや。」

ひと子が、お頭(こうべ)を、お傾(かたむ)け給いたり。いま、ひと子が、半(なか)ば、お戯(たわむ)れのごとくに、お答え給いたり。

「叔父様(おじさま)。お名は、誰(た)も、お教え給わず、ござる。ただ、襄陽の南へと、お行き給え。竹林の彼方に、草堂(そうどう)が、ござる、ござる。」

そのお答えが、劉備の今日の午後の最も大いなる地図と、為(な)り給いたり。

官衙(かんが)に、お戻り給いたる劉備は、その日の夕、早きに、関羽と張飛を、お部屋へと、お呼び給いたり。灯火(ともしび)の下にて、三兄弟が、向かい合いて、お座り給いたり。

劉備が、今日、市にて、お聞き給いたる二度(ふたたび)の文章を、二弟(にてい)に、その儘(まま)に、お渡し給いたり。関羽は、永く、お言葉なく、ござりたり。張飛は、最初は、半信半疑(はんしんはんぎ)にてあったれども、幼なき子らのお口にまで、お出(い)で給いたるとのお言葉を、お聞き給いて、ゆっくりと、両眼を、大きく、お開(ひら)き給いたり。

「兄上(あにうえ)。その人を、お訪い給うを、お得(う)べき、ござる。」

張飛が、まづ、お口を、お開き給いたり。劉備が頭を、お首肯(しゅこう)し給いたり。

「翼徳(よくとく)。ただ、今日、即(すなわ)ち、にあらず、ござる。来年(らいねん)の春、曹操(そうそう)の南征(なんせい)が、お始まり給う事と、為(な)り申さん。その前に、三度を、お訪い給う時間が、我らに、ござり給わねばならぬ、ござる。最初の歩みは、ひと月の後、二度目(にどめ)の歩みは、その三月(みつき)の後、三度目(みたびめ)の歩みは、それより、いっそう、遅く、為(な)り給うべし。」

「三度と、ござり給うか。」

「その人の戸は、ひと度(たび)、お訪い給う歩みにて、お開(ひら)き給わざる、ござる。二度にてもまた、未(いま)だ、にあらざる、ござる。三度目の歩みにて、はじめて、その人が、我らを、お迎え給う、ござる。」

関羽が、深く、頭を、お垂れ給いたり。張飛は、口を、お閉(と)じ給いて、ゆっくりと、お首肯し給いたり。

その夜、劉備は、自(みづか)らのお部屋に、お戻り給いて、独り、お座り給いたり。

今日、お売り給いたる藁鞋ひと足の値、銅貨数枚が、机の上に、お置かれ給いおったのである。その傍らには、昨日、関羽が、お記し置き給いたる四つの文字、髀肉復生(ひにくふくせい)、の紙が、その儘に、ござりたり。劉備は、銅貨数枚の上に、自らの手を、お載(の)せ給いたり。その後、ゆっくりと、筆を、お握り給いたり。

紙の下の余白(よはく)に、小さき五つの文字を、お記し給いたり。

有人在南方(南に、ひと人が、ござる)。

そして、その五つの文字の傍らに、いっそう、小さき三つの文字を、お記し添(そ)え給いたり。

三顧(さんこ、三度を、お訪い給う)。

西の窓の彼方の夜空に、星が、多かりき。烏巣(うそう)の最初の夜明より、今宵の新野の市までの三十日(みそか)の永き夜が、各々(おのおの)の席に、堅く、お座り給いたり。大いなる星ひとつが、お落(お)ち給い、小さき星ひとつが、半年(はんとし)を、いっそう、お輝(かがや)き給いたる後、お沈(しづ)み給い、四十七の男が、十九年ぶりに、はじめて、藁鞋ひと足の値を、お受け給いたり。

明日より、Book 5「三度目の戸」が、お始まり給う、ござる。その最初のひと自(おの)ずからは、三度目の歩みにて、ひと人の戸が、はじめて、しずかに、お開き給う夕に、為(な)り給うべし。

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삼국지 365 Day 120 마무리 일러스트
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✒️ 平訳家の一言 — 延三欽博士(Yeon Sam-Heum, Ph.D.)

その自(みづか)らのお名が、世のお口にて、大いに、お呼ばれ給わざる二十年(にじゅうねん)の永き夜、その夜のあるお市にて、ひと人が、ござる、とのお言葉を、はじめて、お聞き給う夕が、貴方にも、もしや、お訪(おとな)い給いたる事、ござりたるか。そのお言葉を、はじめて、お聞き給いたる時、貴方の歩みは、短く、お止(とど)まり給いたるところに、ござる。永くは、お止まり給わざりて、再び、お歩み給いたるところに、ござる。ただ、その文章が、貴方の歩みの、ひと歩みばかり後ろを、しずかに、お従(したが)い始め給いたるところに、ござる。今日、貴方の傍(かたわ)らにも、ひと歩みばかり後ろを、しずかに、お従い来り給う文章が、もしや、ござらぬか。

📅 明日 Day 121(Book 5「三度目の戸」のお始まり):兄弟が、お争い給う城

「劉備が、市にて、ひと文章を、はじめて、お聞き給いたる翌年(よくねん)の春のお話は、まづ、北へと、お戻り給いて、袁氏(えんし)の兄弟の城の内側にて、未(いま)だ、お終(お)え給われざりたる二兄弟のお争いの上に、いま、ひと度、お重(かさ)ね給う。ひと人が、ござる、とのお言葉は、その争いの席にも、既(すで)に、しずかに、お置かれ給いおったのである。」 — — 平訳家 延三欽博士

平訳 — 延三欽 平訳家 · Sam H. Yeon, Ph.D. · 延三欽博士

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