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WIA 三国志 365

[Day 116] 椅子の縁

掲載 記事番号 58002
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[Day 116] 椅子の縁

四月 · すべて捨てた夜 | 約三分の読み

삼국지 365 · Day 116 · Book 1「星が集まる」
삼국지 365 Day 116 헤더 일러스트
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襄陽(じょうよう)より、お来り給いたるお招きの状(じょう)が、新野(しんや)の官衙(かんが)に、お達し給いたるは、劉備(りゅうび)が、四十七の夜明を、お開(ひら)き給いたる三日(みっか)の後(のち)にてあった。

お招きの状は、丁寧(ていねい)にてあった。荊州刺史(けいしゅうしし)劉表(りゅうひょう)が、新年のお席を、お整え給いて、荊州の諸太守(しょたいしゅ)・名士(めいし)・諸将と共に、劉備を、お迎え給うを、欲し給うとの内容にてあった。文字は、劉表のお手筆(しゅひつ)にてあった。紙もまた、宜(よろ)しきものにてあった。封筒(ふうとう)の角(かど)には、「荊州牧 劉景升(りゅうけいしょう)」六つの文字が、整いて、お記し給われおったのである。

されど、お招きの状の内側に、お畳(たた)み給われおりたる席表(せきひょう)が、異(こと)なりおったのである。最も上の列には、劉表自(みづか)ら。二番目の列には、後妻(こうさい)蔡氏(さいし)の弟(おとうと)蔡瑁(さいぼう)。三番目の列には、荊州の諸太守。四番目の列には、水軍の都督(ととく)と参謀(さんぼう)たち。五番目の列は、お名が、密(みっ)しく、お並(なら)び給いおったのである。その五番目の列の最も下より、二番目の席に、筆先(ふでさき)にて、浅く、お引き降ろし給いたるお名が、ござりたり。

新野 劉備。

張飛(ちょうひ)が、まづ、その席表を、お見給いたり。お顔が、紅(くれない)に、お染(そ)まり給いたり。

「兄上(あにうえ)。これは、人を、お呼び給う席に、あらざる、ござる。人を、お踏(ふ)み給うを、欲し給うとの席に、ござる。」

張飛のお声が、大きからずたれども、部屋の内側の空気を、お揺(ゆ)らがし給いたり。関羽(かんう)は、席表を、しずかに、お見下ろし給いたり。長く、柔らかなる指にて、劉備のお名の上を、お擦(す)り給いたり。何(なに)も、お申し給わざりき。

劉備は、席表を、お畳み給いて、しずかに、お申し給いたり。

「翼徳(よくとく)。人を、お呼び給う席が、必(かなら)ず、上座にて、ござり給わねばならぬとの事、ござらず。末席にも、末席のお故(ゆえ)が、ござる。」

「お故とは、何(なに)に、ござり給うや。」

「末席は、最も後ろに、お座り給う人のお顔が、最も永く、お記(しる)し給わるる席にも、ござる。」

張飛が、永く、首を、お傾(かたむ)け給いたり。関羽は、しずかに、お笑(わら)い給いたり。劉備は、お招きの状を、お受け給いつつ、自(みづか)ら、お返書(へんしょ)を、お記し給うべく、筆を、お握り給いたり。

四日(よっか)の後(のち)の正午(しょうご)、劉備の三兄弟が、襄陽に、お達し給いたり。宴は、襄陽刺史府(じょうようししふ)の内側の大いなる大庁(だいちょう)にて、お開き給われたり。

お入り給う門より、劉備は、席表のお順に、お案内(あんない)を、お受け給いたり。最も前の劉表、その傍(かたわ)らの蔡瑁、三番目の列の諸太守、四番目の列の水軍、五番目の列の諸官(しょかん)を、全(すべ)て、お過り給いたる後、門の側の最も末席が、劉備に、お与え給われたり。椅子(いす)ひとつが、壁に、ほぼ、お付(つ)き給いて、お置かれ給いおったのである。椅子の片足が、他の三足(さんそく)よりも、少しく、お短(みじか)かりき。

劉備は、何(なに)も、お申し給わざるまま、その椅子に、お座り給いたり。短き足のほうへと、体重を、お薄(うす)く、お載(の)せ給うべく、お身(み)を、軽く、左へと、お傾(かたむ)け給いたり。関羽と張飛とは、門の外の回廊(かいろう)にて、各(おのおの)、ひと歩み、離れて、お立ち給うべく、お指示を、お受け給いたり。

蔡瑁が、その光景を、お見給いたり。口元(くちもと)に、薄き微笑が、お掛(かか)り給いたり。その微笑が、永く、お消(き)え給わざりき。

삼국지 365 Day 116 중간 일러스트

宴が、お始まり給いたり。酒杯(しゅはい)が、ひと巡(めぐ)り、お回り給いたり。

劉表が、まづ、劉備を、お呼び給いたり。お老(お)いたるお声にてあった。咳(せき)が、お挿(はさ)み給われたれども、眼には、未(いま)だ、古き刺史の体面(たいめん)が、お遺り給いおったのである。

「玄徳(げんとく)。席が、少しく、遠き、ござる。此処(ここ)まで、お近くに、お来り給え。」

劉備が、席より、お立ち給いたり。お身が、お傾き給いつつ、椅子の短き足が、小さく、お揺(ゆ)らぎ給いたり。極めて細かなるお揺らぎにてあったれども、傍らの太守ひと人が、その音を、お聞き取り給いて、眼を、上り、お見給いたり。

劉備は、その視線を、お無視(むし)給いたり。ゆっくりと、お歩み給いて、劉表の前に、お達し給いたり。両手を、お合(あ)わせ給いて、礼を、お致し給い、杯ひと杯を、お受け給いたる後、お言葉なく、自(みづか)らの席へと、お戻り、お座り給いたり。

蔡瑁が、その刹那、短く、お笑い給いたり。お笑いの音は、大きからざりき。ただ、劉備のみに、お聞こえ給うほどには、ござりたり。

宴の中ばの頃(ころ)、劉表が、お立ち給いて、南の窓辺へと、お歩み給い、永く、咳を、お致し給いたり。咳が、永くなり給い、結局、劉表は、侍女(じじょ)のお支(ささ)えを、お受け給いつつ、内堂(ないどう)へと、お入り給いたり。

刺史が、お抜(ぬ)け給いたるその席にて、蔡瑁の顔が、少しく、前へと、お出(い)で給いたり。

「新野の皇叔(こうしゅく)。今日の宴にて、最も遠き席に、お座り給いたれば、この刺史府の最も遠き席より、お見給いたる荊州(けいしゅう)のお風景(ふうけい)を、ひと首(しゅ)、お吟(ぎん)じ給うべし。」

彼のお声には、礼儀(れいぎ)が、お混(ま)じり給いおりたのである。礼儀の内側には、別なる物が、お混じり給いおったのである。

劉備は、席より、お立ち給いたり。椅子の短き足が、再び、小さく、お傾き給いたり。されど、劉備のお身は、今度(こたび)は、お揺らぎ給わざりおりたのである。腰を、まっすぐ、お伸(の)ばし給いて、その席にて、永く、荊州の南の空を、お見つめ給いたり。その後、短く、ひと言を、お致し給いたり。

「末席より、お見給いたる荊州の風景は、上座より、お見給いたる風景よりも、ひと自(おの)ずから、いっそう広き、ござる。今日、このお席を、お与え給いたるに、深く、お礼(れい)申し上げ申す。」

短きお言葉にてあった。されど、そのお言葉の後(のち)に、大庁の内側が、暫(しば)し、お言葉を、お失い給いたり。蔡瑁の薄き微笑が、その時、お凍(こお)り付(つ)き給いたり。

宴が、お終(お)え給われたる後、劉備は、三兄弟と共に、刺史府を、お出(い)で給いたり。襄陽の夕の風が、彼らの背(せな)の後ろを、お過り給いたり。

関羽が、馬の上にて、しずかに、お問い給いたり。

「兄上。末席より、お見給いたる風景が、本当(ほんとう)に、上座の風景よりも、広かりき、ござり給うか。」

劉備は、遠き空を、お見上(あ)げ給いつつ、お笑(わら)い給いたり。

「雲長(うんちょう)。風景は、同じき、ござる。ただ、末席に、お座り給いたる人のお気持ちが、上座に、お座り給いたる人のお気持ちよりも、少しく、いっそう、広く、ござる、ござらねば、その席を、お耐(た)え給うを、お得(う)ざる、ござる。」

張飛は、馬の上にて、永く、お言葉なく、ござりたり。その後、独り、拳(こぶし)を、堅く、お握り給いたり。

新野へと、お戻り給う路の上の西の空に、冬の星たちが、既に、少しずつ、自らの席を、お選び給いおったのである。劉備の短き足の椅子は、襄陽の大庁の端に、その儘(まま)に、お遺(のこ)り給いおったのである。ただ、その椅子の上にて、今日、お受け給いて、お座り給いたる男のお気持ちは、既に、南の路の上の馬の轡(くつわ)の内側へと、共に、お降(くだ)り来(き)たり給いつつあったのである。

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삼국지 365 Day 116 마무리 일러스트
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✒️ 平訳家の一言 — 延三欽博士(Yeon Sam-Heum, Ph.D.)

椅子に、お座り給いたる時、四足(よんそく)のひとつが、少しく、お短き、ござる事を、お感じ給いたる事が、ござりたるか。その短き足の椅子の上にて、お身を、軽く、お傾(かたむ)け給いて、お座り給うを、お知り給う人が、却(かえ)って、宴の最も遠き席より、最も近く、お見給わるる人と、為(な)り給う、ござる。末席の椅子の片足が、お短き事は、その椅子を、お与え給いたる方の、お小さき試(こころ)みに、ござる。今日、貴方の席にも、足ひとつが、少しく、お短き椅子が、もしや、ござらぬか。

📅 明日 Day 117:髀肉復生(ひにくふくせい)

「襄陽より、お戻り給いたる数日(すうじつ)の後(のち)、劉備が、厠(かわや)にて、自らの内股(うちもも)の内側を、お見下ろし給いて、永く、お言葉なく、ござりたり。馬に、お乗り給わざりたる年月(としつき)が、彼の内股の内側に、しずかに、彼の肉を、再び、お育(はぐく)み置き給いつつあったのである。」 — 平訳家 延三欽博士

平訳 — 延三欽 平訳家 · Sam H. Yeon, Ph.D. · 延三欽博士

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