文 Columnist Kim Mi-hee

薄暗がりの中、向かい合う二つの椅子
向かい合わせに置かれた二つの椅子を思い浮かべてみてください。一つは親御さんの席、もう一つは介護する側の席です。夕暮れの光が差し込む時間、二人は同じ部屋にいながら、しばしば違う時間を生きています。親御さんは三十年前のある夕方の中におられ、介護する側は今日、この瞬間に立っています。このずれを理解できないと、対話はどうしてもぶつかり合ってしまいます。
認知症を患う方にとって、時間は私たちのように一直線には流れません。最近の記憶から先に薄れ、古い記憶のほうがかえって鮮明に残り、その頃がまるで今のように感じられることが多いのです。そのため、すでに亡くなった配偶者を待たれたり、成人したわが子を幼い子どものように呼んだりすることが起こります。これは頑固さでも思い違いでもなく、脳が今とどまっている時間が違うからなのです。
頭ではそう分かっていても、いざ同じ質問を十回も聞かされると、心が疲れてしまうのは当然のことです。「昨日もお話ししたじゃないですか」という言葉が喉元まで出かかった瞬間を、私自身も何度も経験しました。そんなとき必要なのは、より正確な説明ではなく、親御さんが今立っているその時間の中へ、少しの間一緒に入ってみる気持ちなのです。
バリデーション療法とは何か——事実ではなく、心に応える
バリデーション療法とは、親御さんの言葉が事実と異なっていても、その言葉に込められた感情をまず受け止める対話の方法です。「それは違いますよ」と正すのではなく、「そのお気持ち、どうでしたか」と尋ねるほうに近いものです。これは特定の病気を治療したり予防したりする医学的処方ではなく、介護の現場で長年、ケアの技術として根づいてきた対話の姿勢です。ですから、学び、身につければ、家族でも十分に試みることができる方法です。
この方法が定着した理由は単純です。事実を訂正された瞬間、認知機能が弱くなった方は、論理で反論するよりも先に感情で反応されます。決まりの悪さ、悲しさ、不安が先に立ち、その感情は対話が終わった後もしばらく残ります。一方で、感情を先に認めてもらえると、たとえ状況が変わらなくても心が和らぐことが多いと、現場ではよく語られています。
もちろん、この方法があらゆる瞬間、あらゆる親御さんに同じように効くと言い切ることはできません。その日の体調、関係の積み重ね、その瞬間の雰囲気によって反応はいつも異なります。ただ、事実をめぐって言い争う対話よりも、感情を汲み取る対話のほうが互いに傷つきにくいという点だけは、多くの介護現場で共通して語られています。
言い争いの代わりに、こんな対話を
具体的な場面に入ってみましょう。お母さんが「お父さん、いつ帰ってくるの?」と毎晩尋ねられたら、「お父さんはもういないでしょう」の代わりに、「お父さんのこと、とても恋しいんですね」と受け止めてみることをお勧めします。続けて「お父さんとは夕方、どんなお話をよくされたんですか?」と尋ねると、お母さんは訂正された人ではなく、懐かしさを分かち合った人になります。対話の温度がまるごと変わる瞬間です。
もう一つの場面もあります。お父さんが急に「出勤しないといけないのに、服はどこだ」と慌てられたとき、「もうずっと前に退職されたでしょう」と言うと、混乱と自尊心の両方が傷つきやすくなります。代わりに「今日、会社で大事な用事があったんですね、どんなことでしたか?」とお聞きすると、お父さんは自分が今も役に立つ人間だという感覚を、束の間でもつかむことができます。その後、自然に「今日は家でゆっくり休んで、明日また支度しましょうね」とつなげれば、言い争わずに場面を切り抜けられることが多いのです。
肝心なのは、嘘を作り上げることではなく、親御さんの感情に焦点を移すことです。言葉に相づちを打ちながらも、声は低くゆっくりと、表情は柔らかく保つことが一緒に大切になります。目を合わせ、そっと手を握るだけでも、「自分の話を聞いてもらえている」という安堵を伝えることができます。こうした小さな態度の積み重ねが、言い争わずに一日を乗り越える力になります。
介護する人の心もともに労わる
バリデーション療法を学んだ後も、毎回感情を先に受け止めることは決して簡単ではありません。一日じゅう同じ質問に同じやり方で答えていると、どんなに良い技術でも、心の余力が尽きる瞬間がやってきます。そんなときは自分を責めるのではなく、「今日はここまでが自分の精一杯だった」と認めてあげることも必要です。介護は完璧さを競うことではなく、毎日を持ちこたえていくことだからです。
私自身、両親の介護をしていた頃、感情を先に受け止めるどころか、自分自身の気持ちすら整理できない夜が何度もありました。そんな日には、親の部屋を出て少しの間一人で座り、好きな香りをそばに置いて息を整える時間を持ちました。ラベンダーのような穏やかな香りは病を治してくれるわけではありませんが、疲れた心をひととき労わるのには、ずいぶん助けになりました。その数分間が、次の対話をまた穏やかに始める力になってくれました。
介護する側の心がまず落ち着いていてこそ、相手の感情を受け止める余裕も生まれます。自分自身にもバリデーション療法を試してみることをお勧めします。「今日は本当に大変だったね」と自分にかける一言、それこそが、次の対話を言い争わずに始める最初の一歩になるかもしれません。
今日の心ケア実践
★☆☆今日すぐに——親御さんが事実と違うことをおっしゃったら、その言葉の中にある感情の言葉を一つ見つけて、そのまま繰り返してみてください。(例:「待ち遠しいということですね」)事実を正そうとする緊張を手放すだけでも、対話がぐっと和らぐことがあります。
★★☆もう一歩——会話するときは目線を合わせて座り、そっと手を握ったり肩に手を添えたりしながら、声のトーンをいつもより低くゆっくり話してみてください。体の温もりとゆっくりとした速さが、「今は安全だ」という感覚を伝えてくれます。
★★★余裕があるときに——静かな夕方、椅子を二つ向かい合わせに置いて、昔の写真や品物を一緒に眺めながら、昔話に耳を傾ける時間を持ってみてください。ほのかな香りをそばに置いて雰囲気を和らげると、一緒に思い出をたどる時間が少し温かなものになります。
バリデーション療法は、あらゆる瞬間、あらゆる親御さんに同じように効果が表れる決まった公式ではありません。その日の体調や状況を見ながら、ゆっくりと、焦らずに試してみてください。
For more heart-care stories, visit the Korea Self-Healing Association.
Kim Mi-hee — aromatherapist, social worker, certified care worker, and hospital companion manager — draws on her own experience caring for aging parents to write practical, useful guidance for caregivers in the same situation. The Korean Today, Nam-Incheon.
#心のケア #認知症介護 #バリデーション療法 #親の介護 #介護 #介護の対話術 #セルフケア
[ キム・ミヒ記者: incheonsouth@thekoreantoday.com ]
地域広報大使に応募 支局長に応募 コリアントゥデイ 仁川南部
![]() |
THE KOREAN TODAY × WIA CODE
이 기사의 WIA Code
WIA Code 스캐너로 비추면 인터넷 없이 발행 사실과 위·변조 여부를 확인할 수 있습니다.
휴대폰 기본 카메라로 찍으면 스캐너 안내 페이지가 열립니다 — 기사 바로 열기
움직이는 코드(스트림) 한 장에 기사 전문(사진 포함)이 담겨 있습니다 — WIA Code 스캐너로 약 36초 비추면 폰에 저장되어 인터넷 없이도 읽을 수 있습니다. Stream.mp4 도 여기서 받습니다.
WIA Code · 코리안투데이






Leave a Reply