文 Columnist Kim Mi-hee

なぜ、介護する人に香りが必要なのか
介護は、体よりも先に心を疲れさせます。決まった時間に薬を用意し、食事を作り、通院の予定を確認しているうちに、自分の気持ちはつい後回しになりがちです。そうした日々が積み重なると、特に大変なことがなかった日でさえ、理由のわからない重さが残ってしまいます。香りは、そんな瞬間にほんの小さな隙間をつくってくれる道具です。
ここではっきりお伝えしておきたいことがあります。アロマは薬ではなく、病気を治したり予防したりするものでもありません。ただ、香りは私たちの感覚の中でも感情ともっとも近くでつながっているとされ、好きな香りを嗅ぐわずかな時間が気持ちをなだめる助けになると言われています。ですから今日のお話は治療法としてではなく、疲れた一日の中で自分を少しだけいたわる生活の知恵として受け止めていただければと思います。
実際、多くの方が初めてアロマに触れるとき、「これで何かが良くなるはず」という期待を持って始められます。けれども私は、むしろその期待を少し手放していただきたいと思っています。香りは一日をまるごと変えてしまう魔法ではなく、その一日の中に自分のための居場所をひとつ作ってくれる、静かな道具に近いものです。
ラベンダー——一日を手放す、夜の香り
介護のある家庭の夜は、たいてい似たような風景を描きます。親の体を洗い、薬を用意し、布団を整え終えると、時計はいつの間にか夜の九時、十時を指しています。体はそのまま横になりたいのに、頭のほうはむしろ冴えてしまい、昼間の出来事がひとつ、またひとつと浮かんできて、なかなか眠れない夜を過ごしている方も多いのではないでしょうか。ラベンダーは、昔からこうした一日の締めくくりの時間にもっとも広く使われてきた香りのひとつです。
ほのかで柔らかなハーブの香りであるラベンダーは、刺激が少なく、香りに敏感な方でも比較的心地よく受け入れやすいと言われます。就寝の三十分ほど前に、ディフューザーにラベンダーオイルを二、三滴垂らしておいたり、枕元にムエットを置いておいたりするだけでも、部屋の雰囲気がぐっと落ち着きます。大切なのは、その香りを嗅ぐ瞬間に「今日はここまで」と自分自身に言い聞かせる気持ちを一緒に持っていくことです。香りはあくまできっかけであり、その瞬間を本当の意味で自分のものにするのは、結局自分自身なのです。
ただし、ラベンダーが誰にとっても同じように心地よく感じられるわけではありません。中にはラベンダーの香りをむしろ重たく感じるという方もいらっしゃいますが、これはごく自然な個人差です。香りは好みの領域が大きいものですから、他人が良いと言う香りよりも、自分が嗅いだときに心地よいと感じる香りを探していく過程そのものが、セルフケアの始まりだとお伝えしたいと思います。
ベルガモット——気持ちを切り替えたいときに
反対に、朝や昼間にとりわけ気持ちが重く沈んでしまう日もあります。親の体調が思わしくなくて神経がぴりぴりする日、きょうだいとの電話のあとで心が複雑になった午後、あるいは特に理由もなくただ元気が出ない瞬間。そんな日には、自分を横たわらせるような香りよりも、窓を開けるように気分を切り替えてくれる香りのほうが合うかもしれません。ベルガモットは、柑橘類特有の爽やかさとほのかな花の香りが混ざり合った、明るい印象を与える香りです。
ベルガモットは、活動を始める前や、午後に少し集中力が途切れたときに活用するとよいでしょう。ハンカチやムエットに一、二滴垂らしてそばに置いておいたり、短い休憩時間に香りを深く吸い込みながら肩を何度か回してみたりするだけでも十分です。ただし柑橘系のオイルは光に当たると肌への刺激になることがあるため、原液を肌に直接塗ってすぐに日光の下に出るのは避けたほうがよいでしょう。
こうしてラベンダーとベルガモットを並べてみると、香りを選ぶ基準は結局「今、自分の心が何を必要としているか」という問いに集約されます。落ち着かせたい日にはラベンダーのように穏やかな香りを、もう一度元気を出したい日にはベルガモットのように明るい香りを選ぶ、といった具合です。決まった正解の公式があるわけではなく、自分の一日のリズムを自ら読み取る感覚を育てていくことに近いのです。
シーンに合わせて選び、ブレンドする方法
香りを混ぜること、つまりブレンドと聞くと、なんとなく専門的な知識が必要な気がして、最初から難しく感じてしまう方が多くいらっしゃいます。けれども、家庭でセルフケアとして活用する程度であれば、そこまで難しく考える必要はありません。基本は、まず「自分が望む状況」を決めて、その状況に合う香りを一つか二つだけ選び、少量から始めることです。最初から複数の香りを一度に混ぜるよりも、一つの香りにまず十分慣れてから、別の香りを加えてみることをおすすめします。
例えば、夜のリラックス用にはラベンダー一種類だけでも十分ですが、ここにほのかなウッド系の香りを一、二滴加えると、より深みがあり落ち着いた印象になることもあります。反対に、朝の気分転換用にはベルガモットに爽やかなシトラス系を少し加えると、香りがより爽やかになります。ただし、オイルによって香りの強さが異なるため、最初は各オイルを一滴ずつ入れて香りを確かめながら、少しずつ増やしていくやり方のほうが失敗が少ないでしょう。
一つだけお伝えしておきたいのは、ブレンドの目的が「より良い効果」を得ることにあるわけではないという点です。むしろ、いろいろな香りを試しに混ぜてみる過程そのものが、忙しい介護の日常の中で、まるごと自分のために時間を使う経験になります。どんな香りが自分に合うのかをゆっくり探していくその過程こそ、このコラムが本当におすすめしたいセルフケアの姿です。
今日の心ケア実践
★☆☆今夜、眠る前に、ハンカチやティッシュにラベンダーオイルを一滴だけ垂らして鼻の近くに置き、深呼吸を三回してみてください。香りを嗅ぎながら心の中で「今日はここまで」とつぶやくだけでも、体の緊張が少しほぐれる助けになるかもしれません。
★★☆ディフューザーをお持ちなら、水を入れてラベンダーオイルを二、三滴垂らし、就寝の三十分前に部屋でたいてみてください。ほのかな香りが部屋に広がる間、スマートフォンを置いてしばらく目を閉じていれば、一日を締めくくる自分だけの小さな儀式を作ることができます。
★★★余裕のある日には、ラベンダーとベルガモットのムエットを並べて、二つの香りを交互に嗅ぎながら、今日の自分の気分により合うほうを選んでみてください。こうして香りと感情を結びつける小さな観察を重ねていくと、自分だけのシーン別香りリストを作っていくことができます。
エッセンシャルオイルの原液を肌に直接塗らないでください。初めて使う香りは、必ず少量を腕の内側に垂らしてパッチテストを行ってから使用してください。妊娠中の方や持病のある方、ペットと暮らしている場合は、使用前に専門家にご相談することをおすすめします。
For more heart-care stories, visit the Korea Self-Healing Association.
Kim Mi-hee — aromatherapist, social worker, certified care worker, and hospital companion manager — draws on her own experience caring for aging parents to write practical, useful guidance for caregivers in the same situation. The Korean Today, Nam-Incheon.
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[ キム・ミヒ記者: incheonsouth@thekoreantoday.com ]
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